4ヶ月に1回のサイクルでご依頼頂いている新造船の進水竣工記念映像の撮影。各船、進水とシートライアルの2回に分けて撮影を行います。この2回の撮影は、難度を上げる異なる要素があり、1回目の進水は「一発勝負」であること。船台から滑り下りる方式で進水するため、やり直しが利かない事がポイントです。
進水の瞬間の撮影自体、純粋な撮影難度が高いわけではありません。映像としてのクオリティーを追求しないのであれば、最初に決めたアングルで固定しての撮影にしてしまえば事足りますが、それではお金を払ってまで撮影するメリットはほとんどありません。プロとしてドローン撮影を受託する以上、初心者が撮る映像やドローンの自動飛行による映像と同じレベルでは示しがつきません。
大漁旗と満艦飾で装飾されています
新造船の船舶写真をドローンで撮影した映像は、ここ数年で数多く見かけるようになりました。ヘリコプターよりも自由度が高く、船体に近づくことができるドローンは、船舶写真の撮影には絶好のツールです。今回進水した376号船は、筆者がこの造船所から見送る船としては通算7隻目、その内、進水の撮影をした船は6隻。6回目ともなるとルーティーンが完成しているかと思いきや、なかなか毎回同じとはいきません。思ったより早く事が進んだり、なかなか動きがなかったり。目安となる合図はあるのですが、それがまた当てにならなかったり。
「進水式」となると、同じ造船所で撮影している以上、基本的に毎回同じパターンで式が進みます。基本的に進水してからの船の動きも毎回同じパターンなので、「こう撮る!」と決めたアングルは毎回同じで、動作のタイミングこそ違ど基本的に撮り方は同じにしています。
375号船「わしゅう」進水時の映像
空撮の基本構成はS-371号船「あさひ」の撮影から変わっていません。曳き船の排気の文さん具合で、船尾を交すタイミングを多少なり変えることはあっても、基本的にドローンがたどる軌跡は大体同じ。そうする事でフライトに関するイレギュラーが発生するリスクは大方予想ができ。開会同じ軌道を撮る事でライブビューのロストや鳥が接近してきたとしても、次のオプションに移行する判断をするなど、冷静に対処できるメリットがあります。 可動機となるドローンはだいたいこのパターンで飛ぶことになります。いつもと違うことをするとなると、失敗のリスクは上がりますので。
ドローングラファーや空撮師と呼ばれる所謂アーティストの性というのでしょうか。安牌を取る必要はあるのですが、やっぱりいつもと違う事をしたくなる。アングルのレパートリーを増やしたくなるので、抑えの為に空中待機しているもう一機のドローンは遊び心専用機。毎回違う場所に陣取って、進水の瞬間を狙っています。
失敗を許されない「一発勝負」である以上、クライアントに期待されている映像素材は必ず押さえる必要があります。その為のバックアップ体制を用意することも必要です。筆者の場合は押さえカメラとして、もう1機のドローンを空中に待機させています。せっかく空中に置いておくので、抑えの映像としてカメラを回しておくことになります。
決まったルーティーンの中で飛ぶメインドローンに対して、動きは少ないものの決まったアングルを追求しないサブドローンは、水面ギリギリに放置しておくのもよし、100m以上の高さから広範囲の風景を押さえるのもよし。あれこれ妄想を膨らませているドローンでもあります。
次回はこのアングルで追いかけていくカットを撮りたいとか考えている
今回進水した船は全長61m、全幅10m、総トン数270G/Tの貨物船です。この総トン数は船の容積を表す単位なので、純粋な重さは排水量という形で表されます。この計算式は複雑なのですが、大雑把に計算すると今回の船の重さは108,000kgほどあります。
無事海に浮いた船は、艤装桟橋で内外装の仕上げや手直しを行い、進水から1〜2週間後、シートライアル(公海公試)が行われます。新造船撮影第2部はこのシートライアルの合間に時間をいただき、実際に海上を航行する姿を捉えます。
撮影舞台となる浦共同造船所は、淡路島の浦港内に位置する1921年操業の造船所です。造船所の建造最大能力は長さ60m × 幅11m × 深さ4.5m トン数850G/Tを誇ります。今回のS-376号船は貨物船故トン数こそ少ないですが、寸法は建造能力のほぼ一杯の大きさです。
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(SUSCドローンスクール大阪)。