DJI AirシリーズのNewモデルが発表されました。カメラのアップグレード、障害物検知・機体保護機能やUIの強化を中心とした、DJI Air 3のマイナーチェンジです。
機体の仕様諸元は以下の通りです。
DJI Air 3シリーズの特徴である、2機掛けされた撮影用カメラ。35mm版換算で24mm(広角)と70mm(中望遠)カメラのうちメインカメラとなる広角カメラのCMOSセンサーが1/1.3inchから1inchサイズに大型化。これにより、静止画の最大サイズは約5033万画素(8192x6144px)に対応(標準設定では1200万画素(4000x3000px)します。
レンズ自体も大口径化(f2.8→f1.8)され、約1.25EVほど明るいレンズになりました。
中望遠用のサブカメラはDJI Air 3からの仕様変更はありませんが、
高感度撮影の幅も広がり、撮影モードにより異なりますが、ISO3200〜12800(ノーマルモードの動画撮影の場合)の幅でサポートしています。が、DJI製品の高感度撮影はノイズが乗りやすい傾向にあるので、どこまで高感度ノイズを抑えてくれるかは要検証です。
DJI Air 3では、メインカメラとサブカメラ共に同じCMOSセンサーを使用していましたが、Air 3Sでは、メインカメラのセンサーが変更されています。こうなると、広角と中望遠でカラーモードやサンプリング方式がそれぞれ共通化できなくなる心配が出てきますが、幸い発売時点では広角・中望遠共に共通のデータ形式での記録ができる様です。
カメラの懸架システムには大きな変更は加えられていません。
良くも悪くもマイナーチェンジモデルで新機能を追加してくる傾向にあるDJIの製品。DJI Air 3Sにも新たな機能が追加されました。今回のマイナーチェンジの特徴の1つでもある障害物検知機能の強化。特に夜間における障害物検知が可能になったことが大きなポイントです。
暗所での障害物検知自体は新しいものではありませんが、Spark以来封印されてきた歴史があります。光学カメラによる障害物検知システムが搭載され始めた初代Mavic以降、VPSの実装から前後左右、最終的には全方向へのビジョンシステムによる障害物検知が主流となっていました。
※Sparkでは赤外線センサーを仕様した簡易的な障害物検知システムを採用していましたが、温度差があれば、暗所での障害物検知やビジョンセンサーが苦手とする線状の障害物を検知することができていました。
上位機種のMavic 3でも光学センサーによる全方向障害物検知とそれをフル活用した高度操縦支援システム(APAS5.0)を操縦補助機能の基本として位置付けています。
ISO感度が最大12,800まで対応している事から見て取れるように、DJI Air 3Sは夜間撮影能力を重点的に強化したモデルであると言えます。もちろんその方針は撮影を担うカメラはもとより、飛行プラットフォームであるドローン側にも現れています。
ビジョンセンサーと下方赤外線ToFを主体とした従来型のAPASに加えて、前方LiDERが追加されたことにより、周辺光量が乏しい環境であっても、機体周辺の障害物情報を収集し続けることが可能になりました。これにより、夜間飛行時の衝突回避機能の使用が可能になり、併せてReturn to Home(RTH)発動時も、スマートRTHが使用できるようになりました。
※LiDAR(ライダー)(Laser Imaging Detection and Ranging)「光検出と測距」ないし「レーザー画像検出と測距」)は、光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するシステム。
また、リアルタイムポジショニングと地図構築技術(AR空間を構築した機体制御)を搭載したDJI Air 3Sは、十分な明度が確保されている環境にある間はフライト中飛行経路を記憶し続けることが可能になり、バルコニーなどのGNSS信号が受信できない場所から離陸した場合でも、スマートRTHにより安全に帰還することができる様になりました。
筆者からすると、末期のガラケーの如く様々な機能がてんこ盛りになっていて、余計に使いにくくなっていたり、アプリケーションの容量が肥大して、データストレージの肥やしになることが多いと感じるDJI製品の今日この頃ではありますが、DJI Air 3から実装されたVision Assist機能は、ビジョンセンサーが撮影した画像をモニター上に表示することで、進行方向にメインカメラが向いていない状態や、望遠カメラを使用していて視野が極端に狭い場合においても、サブウインドウに表示されるライブビューで見えていない範囲にある障害物を視覚的に認識することが可能です。
現行機にもDJI Mini 4、DJI Air 3、Mavic 3 Sir.に実装されていて、この3機種は特に使い勝手の良い機種だと思っています(あくまで個人の感想です)。一つ難点をあげると、表示される表示は前後左右のみで、下降時の下部は表示不可。とりあえず下方センサーの距離計があるので数値で認識すれば良い訳で、最悪カメラを下に向ければ真下は見えるわけなので、横着するなと言われればまさにその通りなのですが… なお、DJI Air 3Sでは、Vision Assist機能が下方向にも対応する様になりました。おそらく、今後は他のシリーズにもアップデートにより順次実装されることになると思います。
4km飛ぶ様になっただけでも満足だった10年前、伝送システムの進歩は凄まじく、DJI Air 3Sの最大伝送距離のカタログスペックはFCC準拠地域(アメリカや中国など)で堂々の20km。規制の所為で世界最低の性能しか発揮できなかったMIC基準でもCE準拠基準と同等の通信距離を発揮できる様になったため、国内仕様では最大10kmの伝送可能距離を誇る様になりました。
ちなみに、直線距離で20km進むと、ドローンテラスの最寄りを通る地下鉄御堂筋線沿線で行くと東三国(新大阪の一駅先)まで、国内仕様の10kmでも大国町まで飛んでいくことができる能力を持っていることになります。
もちろん、出力と周波数の関係で算出される理論値なので、実用域ではカタログスペックの1/8の距離が実用域と考えておいてください。それでも1,250mは飛ぶ計算で、そこまでのロングレンジフライトをやる人がどのくらいいるのか・・・
DJIの製品ページの下の方に紹介されている3つの機能。
Micro SDを使っているとなかなか使う機会の少ない内蔵ストレージ。Air 3Sでは42GBの内蔵ストレージが搭載されています。これまでは容量の少なさから「Micro SD>内蔵ストレージ」の関係性が根強くありましたが、内蔵ストレージのメリットとして、書き込み速度の速さが挙げられます。
写真を連写するときなどは、超高速書き込みが可能な高級SDカードを使用せずとも、フルスペックの書き込み速度を実現できるほか、データの読み出しも直接行えるため、データ紛失のリスクを軽減できます。
機体本体(Micro SD / 内蔵ストレージ問わず)からデータを取り出すには、機体を起動する必要がありました。暴走による怪我の防止の観点から、プロペラを外して機体を起動するなどの対応が必要でしたが、Air 3Sでは機体の電源がOFFの状態でもデータ転送が可能になりました。これで、いちいちプロペラを外さなくてもOKになります。
Air 3シリーズの充電ハブはかなりの優れもので、実用域でも30分以上飛ぶことのできるドローンが多くなってきた中で、フルに30分飛ばすケースも稀だと思います。筆者が行う1日のロケのパターンで多いシチュエーションが「1フライト15~20分くらいのフライトを10 本」というパターン。撮影終えて帰ってきたドローンのバッテリー残量はというと50%程度。再度フライトに使えるでもなく、保管用においておくにしても若干容量食ってる微妙なバッテリーが溜まっていく状態を解消できる機能です。
注意点としては、集電の為に電力ドナーとなったバッテリーは、長期間そのままの状態で置いておかないようにしてください。
DJI Air 3SはC1(CE基準)、OpenカテゴリーでもA1に分類されています。日本国内でも無人航空機としてに分類されているため、航空法規による飛行規制の対象です。機体登録義務の対象となり、飛行に際しては特定飛行の許可や承認を得る必要があるほか、飛行にあたり必要な各種行政手続きがあります。なお、Bluetooth5.1に対応しているのでリモートIDの発信機能が搭載されています。
ビジネスシーン向けの認定証取得を目指せる「プロフェッショナルコース」と、趣味でドローンを楽しみたい人に向けた「パーソナルコース」の2コースをご用意。国土交通省登録講習団体にも指定されています
(SUSCドローンスクール大阪)。