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大阪府【進入困難河川護岸点検】実証実験を行いました

昨年11月末に開催されたインフラメンテナンス国民会議ビッチイベントでシーズ提案を行なった、「橋梁点検に係る目視点検代替技術」の技術実証として2社が課題解決の可能性が高いシーズとして実証実験対象に選出され、南山城村で「第21回実証実験」を2023年10月4日に実施しました。現場踏査から技術検証を含めて約1年間のプロジェクトでした。

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大阪府大阪狭山市【東除川】

大阪狭山市内を流れる東除川は、河内長野市下里町から狭山池を経由し松原市大堀で大和川に合流する一級河川です。

実証実験の場は、狭山池の1.7km下流の湾曲箇所で、護岸通路等の設備が整備されておらず、河川直上も樹木が繁茂した環境で、職員による目視点検もドローン等による上空からの間接目視も困難な場所が選出されました。

河原に降りられる箇所が現場に1箇所あり、そこから水面付近はドローンが飛行できる空間がある程度確保できていました。

ブラインドになっているエリアでは、倒木、ブロック護岸の崩落範囲の拡大や応急対策として設置された土嚢の崩壊などが確認できました。

可能な範囲で障害物を回避しながら奥へと進んでいきましたが、倒木で進路が阻まれ、上空も樹木で塞がれた状態で、行き止まりとなってしまったため、その奥には上空からのアクセスを試みました。

使用機材

「出来るだけコストを掛けずに」が主目的でもある今回の実証実験。市販されているドローン機材を用いてどの程度まで変質の状態を見られるかがポイントになります。

セレクトした機体は2種。

DJI Mini 3 Pro

ビギナー向けにと開発された小型ドローンのDJI Miniシリーズ。その上位グレードに当たるDJI Mini 3 Proは、インフラ点検の現場でもその能力を遺憾無く発揮してくれます。

小型軽量ながら、大容量のバッテリーを搭載し、カタログスペック上の航続可能時間は最大46分、実用域でも30分ほどの連続飛行が可能なモデルです。カメラセンサーはワイド(35mm判換算で24mm)レンズ仕様のみですが、カメラの仰角が最大60°まで向けられるため、樹木繁茂空間であっても、カメラによる周辺確認が可能な範囲が広く確保できます。

DJI Mini シリーズも、実証実験を行う直前にDJI Mini 4 Proが発売され、こちらは航続可能時間が10分ほど短くなった代わりに全方位障害物検知機能が搭載。ビジョンセンサーの配置の関係上、上方向の検知には難が有りそうですが従来モデルになかった左右方向の検知は可能になったのは大きな進歩です。おそらくこちらの方が今回の点検用途に向いています。

Skydio 2+ Enterprise

国内はインフラ点検用ドローンとして知られるSkydio 2+。DJIのMavicシリーズと同規模の機体に、Visual-SLAMを搭載し操縦操作の大部分を自動化しています。また、このドローンの特徴として、撮影用カメラの最大仰角が90°、真上を向くので、橋梁の桁下点検や構造物の床板下面の点検にも活用できる他、別売りの3D Scan Systemを使用すれば、構造物の三次元モデリングデータ取得を目的とした飛行と撮影を自律制御で行うことが可能です。

しかし、フライトアプリケーションや操縦系統のUIがDJI製品に対して圧倒的に後塵を拝している事、機材価格が1桁違うなどの理由から今回は参考機としての選出ですが、Visual-SLAMによる障害物回避機能は、UIの悪さを考慮しても障害物の多い空間での飛行にはアドバンテージがあります。

実証実験成果・活動報告

インフラメンテナンス国民会議近畿本部フォーラムHPにて、実証実験報告が公開されています。

見えてきた更なる課題

1. オペレーションの属人化

ドローンを用いる作業全てに共通する課題ではありますが、RPAS型を用いる場合、どうしても操縦技能レベルの個人差がミッションの遂行に大きな影響を与えることになります。様々な要因が重なって、高い操縦技能を有するフライトオペレーターが育ちにくい環境になってしまっている日本国内において、成果を上げられるオペレーターの確保(ハイスキルオペレータの確保や人材の発掘・育成)が急務となっています。

2. 樹木の繁茂状況によっては遠隔操作可能範囲が著しく短くなる

現場踏査を行った2月にはあまり気にならなかった樹木繁茂による映像伝送通信の減衰が、10月の実証実験本番では顕著に表れるようになっており、特にS字構造になっている現場では、湾曲箇所の裏側に回ってしまうと、通信強度の不足から来るライブビューの乱れが発生していました。

3. 天候に左右されやすい

ドローンを用いた点検業務を行う場合、作業日の天候は最も重い要素になります。晴れていれば良いというわけではなく、橋の構造によっては風向風速も作業に大きな影響を及ぼします。

こんな日は絶対に無理!

一般的な天気予報も、最近では10日以上先の予報を出していて、短期予報では雨が降り出すタイミングや、数時間毎の風向風速なども見られる様になってはいます。

データ取りと実証実験当日の2日とも、点検を行うには問題のない風速で

5. ズレた日本のドローン飛行規制

世界的に見て、ドローンの運用に係る法規として柔軟な部類に入るとされている日本の航空法規ですが、法律以外のところで雁字搦めの規制を敷くことに於いて匠の技を持つ日本政府や行政機関によって、法律条文以上にドローンが使えない状況に陥っている現状があります。

幸い同業者の中でも現場経験の豊富な方はこの現状に問題意識を持っている方も居られる様で、その点については今後の法規制最適化に期待が持てるのですが、そもそも今の制度導入を止められなかった(寧ろ推し進めた)業界に見切りをつけて、屋外でのドローン運用から足を洗ってしまったドローンオペレーターもちらほら。

おもちゃの様なラジコンヘリに150万円ほどかけて申請する機体認証や、操縦技量を図るには易しすぎる国家試験の操縦実技など、問題は山積み。現行法規はこんな状態である事を念頭に、どの様な改革が必要なのかを今一度考える礎になれば幸いです。

  • 機体重量100gを少し超える様なトイドローンでも、屋外で飛行させるには機体登録が必須で、特定飛行に該当する場合は飛行許可・承認を取らないといけないこと。ICAO加盟各国では500g未満のドローン等に係る規制を緩和し、250g未満のドローン等は既に無人航空機から除外されていることを考えると、そもそも此処が全ての元凶であると言える。
  • 目視外飛行の定義が法律と制度設計の段階で差異があり、統一見解で制度設計が成されていないため、チグハグな制度運用がされている。
  • 機体認証制度が運用実態からかけ離れた制度になっていること、実用機を製造している主要4社が日本の型式認証制度に対応しない決定をしたため、現状全ての実用機が認証外機となっている。
  • 機体認証の取得ハードルが高すぎるため、市街地でのインフラ点検等でドローンが道路上空を飛行する場合、第三者の往来のないタイミングで飛行を行うか、道路の通行止めが必要であり、ドローンを使う意味が無い。
  • ドローンの活用例として物流での利用や空飛ぶクルマとしての活用を主眼に置いてしまっているため、現在主流となっている運用事例から逸脱した制度になっている。

もう少しドローンを使い易い制度に戻そう

河川護岸の点検作業や高所構造物の簡易的な確認作業など、市販の小型ドローンを使って「ちょっと見に行く」的な作業ができるだけで、設備やインフラの管理がものすごく楽になるのですが、2022年6月以降はそのちょっと見に行くが一切不可能な制度になってしまいました。

2023年12月中に、レベル3.5(カテゴリⅡの規制緩和)が行われるとのことですが、告示内容を見るの、どうにも制度設計側の想定や着眼点がズレている様子。小型機の規制は更に緩和が必要だと考えています。

先述の通り日本の航空法(本文)に書かれているドローンの飛行規制は諸外国と比べても比較的緩い規制であることが知られています。しかし、それを潰して余りあるものが、飛行許可承認の審査要領に含まれていて、規制実態となる審査の裁量が行政側に大きく委ねられていることが問題で、さらに、ドローンを運用する技術者が育たない環境を施行規則第5条の2のたった40文字で作り上げてしまっているので、結局10年後には東の端のガラパゴスになってしまっていそうで心配です。

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