2021年3月2日、DJIの新製品ドローンであるDJI FPVが発表されました。ドローンとしては2020年夏に発売さえれたMavic Air 2以来の新型機です。

満を辞して、DJIがレーシングドローンの分野に裾野を広げるのかと思いきや、既に海外ではこのFPVシステム自体は販売されており、実際にレーシングドローンのライブビューイングシステムとして既に使っている人も居るくらいです。

今回発売される製品は、既存のデジタル信号式ライブビュー電装システムを搭載したドローンがパッケージとして売られることになります。国際規格に則らない日本の電波規制にも何とか対応する形で発売されるということで、ジンバル制御のない空撮映像(シネマティックFPV)をDJI空撮機のクオリティを持つドローンで撮影出来るようになると、マンネリ化してきている空撮映像の表現の幅が更に広がることになるでしょう。

https://www.dji.com/jp/dji-fpv?site=brandsite&from=homepage(DJI-HP DJI FPV製品ページ)

DJIのFPVモジュール自体は新製品ではない

昨年の秋ごろから情報が小出しに漏れ出ていた製品ではありますが、先述の通りDJI製のFPVユニットは、海外では以前より販売されていました。5 inchクラスのレーシングドローンを愛用しているユーザーで、DJI製FPVユニットを使用している人も少なからずいるかと思います。

今回発表されたDJI FPVのポイントは、FPVユニットだけではなく、1つのパッケージとしてFPV飛行が楽しめるドローンが発売された事にあるのではないでしょうか。

DJIドローンの扱い易さはそのままに、圧倒的な機動性を

DJI FPVの特徴として「圧倒的な機動性」が挙げられます。従来型のDJIドローンで、最も機動性が高かったドローンはというと、発売直後のInspir 2でした。

DJIのドローンに共通して言えることは、「誰でも簡単に、かつ安全にドローンの飛行を楽しめる事」を追求し、障害物検知機能の搭載、APASによる積極的な操縦介入機能、各種センサーを用いた安定飛行制御など、徹底した落ち難いドローンを作ってきました。

DJI FPVはその精神はそのままに、没入感を追求したドローンとしての属性を持たせ、アグレッシブな機動による従来の空撮映像から一歩先を行く映像表現を追求できるような製品に仕上がっています。

DJI FPV機体スペックの動力性能を見ると、最高速度(水平)140km/h、上昇下降速度共に無制限と既存のDJI製ドローンを圧倒的に超える動力・機動性能を有しています。

小振りでズッシリ 駆動系は余裕のある仕様

2021年3月13日追記

デモ機到着が遅れている為、ようやく現物を目にする機会を得ました。DJI FPVは後述の仕様諸元にあるように、期待寸法はMavic Air 2より少し小振りで、重さは昔のMavic Pro以上。手で持つと、ドローン本体の重さを感じます。

コントローラーのスティックは、従来製品と比べてバネの反発が軽くよりダイレクト感のある操作性となっているのでは無いでしょうか。ほとんど操作に力を入れる必要がありません。

FPVゴーグルは、日本の電波法と技適制度への対策を施した特別仕様。従来の5.8GHz帯を使用するFPVゴーグルと比較しても、無線免許と開局手続きの要らないゴーグルは画期的ではありますが、2.4GHz帯の電波しか使えないとなると、やはり伝送遅延が怖い。最高速度の140km/hで飛行中に0.05秒でも遅延が発生してしまうと、ライブビューを見て想定している機体位置と実際の機体位置に1.9mの誤差が出てくるわけで、高精度を追求しないといけない飛行の場合、この誤差は致命的です。

機体サイズに対して大出力ののモーターを搭載し、3翼ソリッドプロペラのブレードはウイングレット付きで機動性能を追求した形を採用しています。

3つのモード

DJI FPVには3つの操縦モードがあります。

  • FPVのダイナミックな映像を簡単に楽しむことのできるSモード。
  • 従来のドローンと同じ制御方法で没入型飛行を体験でき、DJIの安全機能を備た初心者向けのNモード
  • 自由度が高い完全なマニュアル(ATTIモードではない)操作とユーザー自らパラメーター調整が可能なMモード

SモードはNモードとMモードの中間に位置する操縦モードで、おそらく多くのユーザーがこのモードで飛ばす事になるのではないでしょうか。

Mモードは、GNSS、ジャイロセンサーなどの介入を受けず、全ての飛行制御を手動で行うモードで、Phantom 4シリーズやInspire 2シリーズなどに搭載されていたAモードとは全く異なる操縦モードです。たまに、ATTIモードをマニュアルコントロールだと思っている方がいらっしゃるので、その辺りはご注意を。ATTIモードは7割以上ドローンが自律制御して飛んでいます。

「もしこのドローンを購入して飛ばしてみる」となった場合、まずは従来のPモードに近いNモードで操作に慣れる事をお勧めします。

DJIドローンの基本コンセプト「フライングカメラ」継承

中型レーシングドローンのクラスとして人気のある5inchクラスのドローンに搭載されているカメラはあくまでドローン側の「目」として、進行方向が見えればいいので、カメラの画質はそこまで良くはありません。

DJI FPVに搭載されているカメラは、「目」としての役割は果たしながらも、しっかり映像を捉えるデジタルカメラとしての役割を担うことのできる性能を有しています。

基本的なカメラ性能は、Mavicシリーズでも採用されている1/2.3 inch CMOSセンサーを搭載、12MPの有効画素数で、映像のクオリティはMavic 2 ZoomやMavic Air 2と同等の性能が期待できます。

このドローンを使ってレースをワンメイクレースをすることもできるでしょうけど、ドローンレース用の機体としては些か高額高機能すぎます。やっぱりDJIは空撮機メーカーなのです。

ジンバル無し!ドローン空撮新しいけど古い形

DJI製ドローンのカメラは3軸ジンバルによってカメラは常に水平に保たれています。今回発売されたDJI FPVにはジンバルによる画面の水平維持機能はありません。機体が傾くに連れて映像も傾きます。ジンバルによる補正が入らないため機体の動作がもろに映像に現れることになります。

従来の空撮機ではそれは良しとされていませんでしたが、カメラがドローン本体に固定されたレーシングドローン独特のフレーミングは2019年後半ごろから少しずつYou Tubeなどで目にするようになってきました。

従来型のドローン映像
シネマティックFPVと呼ばれる高画質ビデオカメラを搭載したレーシングドローンによる映像

シネマティックFPVの映像上の特徴は、水平線が必ずしも水平ではないこと、たまに天地がひっくり返っていることの2点。

実はドローン黎明期、Phantom 2が発売された頃は基本的にカメラはジンバル機構によって懸架されていませんでした。なので、今一度ジンバルレスの空撮が注目されている事になります。原点回帰ですね。

DJI FPV仕様諸元

機体性能

飛行重量795g
機体寸法178 x 232 x 127 mm(本体のみ)
255 x 312 x 127 mm(プロペラ込み)
最大速度(水平)Mモード:140.0km/h
Sモード:97.2km/h
Nモード:54.0km/h
最大上昇速度Mモード:無制限
Sモード:15m/s
Nモード:8m/s
最大降下速度Mモード:無制限
Sモード:15m/s
Nモード:5m/s
最大加速度0-100km/h 2秒
最長連続飛行時間20分
耐風圧性能10.83~13.61m/s
運用限界高度6,000m
GNSSGPS + GLONASS + GALILEO

ドローンのサイズとしてはMavic Air 2(183 x 253 x 77)に対して、若干小振りではあるものの、飛行重量は795gと初代Mavicよりも重い仕様になっています。なので、小さいけれど重たいドローンと言うことです。

最高速度は、フルマニュアル操縦となるMモード選択時に140km/hに到達します。アメリカのドローン規制(UAS Part 107)に記載されている最高速度100mph(160.4km/h)規制への対応のため、水平移動に関しては制限が設けられています。そのため、同サイズのレースドローンとしては、どちらかと言うと「遅い」ドローンであることが言えます。映像撮影のことを考えるなら140km/hも出れば十分ですけど。

最長飛行時間は40km/hの定速飛行で20分。実用だと15分程度でしょうか。高速高機動型ドローンを20分間集中力を保って飛行させ続けるなど、普通は無理。かなり疲れます。

カメラ性能

センサー1/2.3 inch CMOS 12MP
レンズFOV 150° 35mm判換算14.66mm
フォーカスレンジ 0.6m〜∞
ISOレンジ100〜12,800
静止画サイズ3840 x 2160
写真フォーマットJPEG
動画サイズ4K : 3840 x 2160 @ 50/60fps
FHD : 1920 x 1080 @ 50/60/100/120fps
動画フォーマットMP4 / MOV(H.264/MPEG-4 AVC、H.265/HEVC)
ジンバル可動範囲チルト:-65°〜70°
ジンバル操作範囲チルト:-50°〜58°
スタビライズ機構単軸(チルト)、電子式ロール軸

機載カメラの設定も、従来のDJIドローンとは仕様が異なります。どちらかと言うと動画撮影に重きを置いたカメラの仕様で、静止画撮影には全く使えないドローンであると言えますし、そもそも写真を撮るのにこのドローンを選ぶ人は、よほどの物好きかと。なので、一応写真は撮ることができますが、あくまで「一応」。静止画フォーマットはJPEG形式のみです。

動画撮影に関しては、FOV(横方向画角) 150°の超ワイドなレンズを搭載。最大4K 60fpsの動画撮影に対応、FHDサイズの動画ではフレームレートを120fpsまで上昇させ1/4倍速スローモーション撮影(30fps換算)も可能です。動画形式はMP4とMOVに対応、動画コーデックもH.264/MPEG-4 AVC(標準的な動画圧縮規格)に加えてH.265/HEVC(新しい動画圧縮規格)にも対応、「動画がメインですよ」と言わんばかりの性能特化と言えます。

FPV仕様のジンバル機構

「レーシングドローンで空撮を」と言うコンセプトのドローンなので、ジンバルの機能は限定的。機械的にはチルト(上下)方向への可動域しか有していません。ロール軸に対する傾き補正は行うつもりは無く、デジタルジンバルによって細かい映像のブレは補正してくれるようです。

DJI FPVのジンバル機構の特徴は、チルト方向の可動域が他のDJI製ドローンと比べて広い事と、仰角が58°まで上向けられると言うところにあります。本来の仕様目的では仰角58°を意識して使うことは少ないかと思いますが、使い道のほぼ無い写真撮影機能を使って、この仰角58°活かす方法はあります。機体が届いて航空局の飛行許可承認を通したら、ちょっと試してみましょうかね。

カメラの下には、デュアルカメラセンサー用カメラが搭載

バッテリーも高機能型

レース用のドローンといえばラミネートパウチで梱包されたリチウムイオンポリマーバッテリーを使用しているものがほとんどですが、DJI FPVでは他のDJI製ドローンと同様にインテリジェントリチウムイオンバッテリーを使用しています。

古いドローンやレース用ドローン、マイクロドローンで多く使われているLi-Poバッテリー(F450用に使用していたもの) + 電圧チェッカーつないでいます

バッテリーとしての基本原理は同じですが、内蔵のインテリジェントバッテリー管理システムが、リアルタイムでバッテリーの状態をモニタリングするため、安心して飛行することができます。

バッテリーの電圧管理の煩わしさは大幅に軽減されていますが、保管環境の管理や取扱の基本は、バッテリーの仕様に関わらずる必要があります。何しろバッテリー1本が高額ですから。

仕様

  • インテリジェント フライトバッテリー
  • バッテリー容量:2000 mAh
  • 電圧:22.2 V
  • 最大充電電圧:25.2 V
  • バッテリータイプ:LiPo 6S
  • 電力量:44.4 Wh@0.5C
  • 放電率:標準:10C 
  • 重量:295 g
  • 充電温度:5℃ ~ 40℃
  • 最大充電電力:90W

DJI FPVは「無人航空機」

DJI FPVは飛行重量(ドローン本体とバッテリーの合計重量)が795gありますので、小型無人機の区分けでは「無人航空機」に該当します。よって、屋外でDJI FPVを飛行させるには、航空法第9章(いわゆるドローン規制)の対象です。

航空法で飛行が禁止されている場所や、定められた方法に依らず飛行させる場合は、航空局へ飛行許可承認申請を行い飛行許可許可あるいは飛行の承認を得る必要があります。

ドローン情報基盤システム

また、FPVゴーグルを使用して飛行させることがほぼ絶対となるでしょう。DJI FPVは従来のDJI製ドローンと同様に、モニターにライブビューを映し出すタイプのFPV飛行も可能です。どちらにせよ、操縦者が機体を直接目視により監視しない状態での飛行全てが目視外飛行に当たるため、取得した飛行許可許可承認書に、航空法第132条の2第1項第6号の記載があることを確認しましょう。

なお、特殊な申請方法を取らない限り、人口集中地区内でのFPV飛行は飛行許可承認を取得していても違法となりますので、特に包括許可承認を取得されている方はご注意ください。

パッケージと機体価格

DJI FPVの基本パッケージである「DJI FPVコンボ」には、FPVドローン本体、Goggles V2、送信機 2、DJI FPVインテリジェント フライトバッテリー、DJI FPV Gogglesバッテリー、DJI FPV AC電源アダプター、予備フロペラ、関連ケーブル&アクセサリーが同梱され、154,000円です。

DJIストア製品ページより

レーシングドローンにしては機体価格が高額すぎるので、やはり空撮用ですね。

なお、このDJI FPVコンボにはフライトバッテリーが1つしか付属しません。より長時間の飛行を求める場合は、追加バッテリーキット(DJI FPV Fly Moreキット)33,000円の同時購入をお勧めします。

DJI FPV Fly Moreキット概要

DJI FPV Fly Moreキットには、DJI FPV インテリジェント フライトバッテリー×2とDJI FPVバッテリー充電ハブが含まれ、より長い飛行時間を実現します。

充電ハブを使用して、3個までバッテリーをセットして順番に充電できます。

同梱物

  • DJI FPV インテリジェント フライトバッテリー ×2
  • DJI FPV バッテリー充電ハブ ×1

現在テスト機入荷待ち中…

MURAMOTO DRONE TERRACEに併設しているドローンショップでも、このDJI FPVを取扱います。

まだ手元の実機が届いていないので、細やかなレポートは後日追記しますのでお楽しみに。


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